皆さん、こんにちは!
アスパーク塾ライターのシップです!
第3回は『フェルマーの最終定理』というテーマでお話しさせていただきます!
xn+yn=znを満たす自然数の組み(x, y, z)は存在するか?
エンジニアの基礎中の基礎とも言える、三平方の定理はご存じですよね?
直角三角形の対辺と隣辺の長さをそれぞれxとy、斜辺の長さをzとしたとき、x2とy2の合計が斜辺であるz2と同じ値になるというものです。
これは設計をする際には必須の知識で、例えば建築をする方、図面を書く方は良く用いるでしょう。
この三平方の定理を満たす組みは、無限に存在することが知られています。
ここで重要なことは、“三平方の定理を満たす自然数(ピタゴラス数)が無限に存在する”という点です。
では、三平方の定理の2乗部分が、2より大きな数字の場合、その式を満たす自然数は存在するのでしょうか?
結論から申し上げますと、三平方の定理の2乗の部分を2より大きくしてしまうと、その式を満たす自然数の組はなくなります!
これを言い出した人物が、フランスの17世紀初めの数学が趣味の裁判官、ピエール・ド・フェルマーです。
理屈は簡単ですね。
これは、文系の方でも理解できる問題だと思います。
ということは
この問題を証明することは簡単なんじゃないの?
と思う人もいるでしょう。
そう思った数学者は、この証明に取り掛かり、こう言います。
悪魔の証明だ…。
天才数学者のキャリアが一撃で失われる…。
この問題は、実はこのように言われるほどの超難問なのです。
事実、“フェルマーの最終定理”の証明は、その後なんと約300年かかります。
そしてこの間に数学はすさまじい発展を遂げていきました。
例えば
- 虚数:iを数学でどのように使うか。
- 素数:素数は無限に存在する! 実はこの事実が、フェルマーの最終定理をさらに難問にしました。
- ガロア理論:n次方程式の解の公式は存在するのか!?(線形代数学)
- コンピューターが数学に使われる:nが40,000,000近くの素数についてフェルマーの最終定理が正しいことを示した!
世界中の数学者の血の滲むような努力により、この問題の解決の糸口は日本においてまったくの別分野で起こります。
日本人数学者の予想は、“すべての楕円曲線はモジュラーである”というものです。
これを“谷山・志村予想”と呼びました。
なんのこと?
と思われますよね。
詳しく説明することは難しすぎるので割愛しますが、大事なことは楕円曲線のモジュラーと同じものではないのか?という考え方です。
実は、もしフェルマーの最終定理が間違っていると考えると、xn+yn=znから描ける楕円曲線はモジュラーではないということは分かっていたのです。
谷山・志村予想によると、すべての楕円曲線はモジュラーのはず。
ところが、フェルマーの最終定理が間違っていたら、モジュラーではない楕円曲線が存在するということになります。
回りくどい言い方をしましたが、
谷山・志村予想が正しいとすると、フェルマーの最終定理も正しい。
となります。
この谷山・志村予想の証明に取り組んだのが、幼いころからフェルマーの最終定理の解決を夢にみて、たまたま楕円曲線の権威になったイギリスのアンドリュー・ワイルズです。
1995年、アンドリュー・ワイルズは、谷山・志村予想を証明した後、黒板にこう書きます。
よって、xn+yn=znを満たす自然数の組みは存在しない
数学者300年の戦いに終止符が打たれた瞬間でした。
この証明はいわゆる背理法によって行われました。
背理法なんてエンジニアには関係ないや
と思った方もいるかもしれません。
実は、エンジニアリングを数学で支える統計学の基本的な考え方は背理法なのです。
これは背理法という数学の考えが私たちに直結している一例です。
数学という科学が、工学を支えているというお話でした。
フェルマーの最終定理は一見すると簡単に解けそうなものですが、約300年もの間、解かれることはありませんでした。
それだけ長い間解かれなかった問題の糸口となったのが、別分野の考えです。
関係ないと思われているものでも、どこかで関わっているという良い例ですね!