病める人を支え続ける、日本看護界の
ナイチンゲールたち
現在も戦禍に苦しんでいるクリミア半島で約170年近く前に起きた戦争に従軍し、夜間の巡回看護や衛生環境の改善などに尽力し、傷病兵の献身的な看護をしたことから今も国際的な名声を保ち続けるイギリスの看護師・ナイチンゲール。彼女の生誕100年を記念して1920年から始まった「フローレンス・ナイチンゲール記章」を2015年に受章した、2人の日本人看護師を今月は取り上げたいと思います。
まずお一人は、高齢(65歳からそう呼ばれるそうです!)の方、障害をお持ちの方、小さな方を分け隔てせず、誰もが気軽に利用できるデイサービスを提供する。そんな発想で生まれた「富山型デイサービス」施設「このゆびとーまれ」を創設し、日本に新たな看護の在り方を提唱した惣万佳代子(そうまん かよこ)さん。
「ここでは、赤ちゃんからお年寄りまで、障害を持つ人が一つ屋根の下で過ごしています。病院は退院すれば、そこでお別れですが、ここは生活の場なので、その人が望めば死ぬまでつきあえる。楽しいことも悲しいこともあるけれど、生きていると感じられる。」(引用:認知症フォーラム.comより)と語る惣万さんのお話しから、親世代と子世代が分断・孤立している現代社会に、世代間で助け合う「共生」を取り戻し、そこには取り残される人は誰もいないということを自らの行動で示そうとされていらっしゃるように私は感じます。
もうお一人は、衛生課技師として戦後、全国で最も乳幼児の死亡率が高かった三重県で食生活や衛生環境の改善に取り組み、お母さんの労働環境や食生活の改善、赤ちゃんのおむつの衛生指導などに現場の保健師教育を通して取り組まれ、乳幼児の死亡率を下げることに成功。40代半ばで現場に戻り、1972年に国内初の看護職畑から任命された学校長として、2,000人以上の看護師を養成してきた山田里津(やまだ りつ)さん。
「(ナイチンゲール記章の)受章はまったく思いがけなく、筆舌に尽くしがたい。青天の霹靂(へきれき)です。」(引用:広報やちよ「博愛の精神で看護活動に励んだ70年間」より)と語る山田さん。“看護教育の母”は90歳を超えても著作や講演などを通して、日本の看護界に貢献されています。
結び
♪♪今月のヒークンお薦め・癒しの一枚(^^♪
「アース・ステップ」渡辺貞夫
今月は誰もが排除されない共生社会の発展を願いつつ、寒い季節にピッタリの音楽を紹介したいと思います。“世界のナベサダ”こと、アルト・サックス奏者渡辺貞夫の、個人的には最も好きなアルバムである1993年発表の「アース・ステップ」。真冬のニューヨークで録音されたこの作品の楽曲の一つ一つが、寒い冬に温かいコーヒーを飲みながら、ゆったりと寛ぐ時間に聴けるような仕上がりになっています。特に3曲目「ウィル・ネヴァー・ノウ」、5曲目「ワン・ナイト・イン・ア・ドリーム」、11曲目「ティル・ウイ・ミート・アゲイン」の3曲はお薦めです。この名盤が未だに再発されず、廃盤になっているのがとても残念です。
再発祈願!