福岡ハカセと虫と絵画の絶妙な動的平衡
内向的な性格でヒトより小さな虫が大好きだった幼少期に、蝶の羽根の美しく自然な色彩に心惹かれるようになり、それ以来、小さな虫に関する本を探しに図書館に通いつめていたある日、「微生物の狩人」という本と出会い、17世紀のオランダに世界で初めて顕微鏡を発明した博物学者アント二・ファン・レーウェンフックという人がいたことを知った福岡伸一さん。
まだ小学生だった福岡ハカセが自称“虫オタク”の好奇心を存分に発揮し、レーウェンフックが生まれ育ったオランダ南西部デルフトの町に同時代に住んでいた、ある世界的な画家がレーウェンフックと同じ歳だったことを突きとめ、その画家との“運命的な出会い”を果たします。
その世界的な画家の名前は? そう。皆さんよくご存じのヨハネス・フェルメール。現存する絵画の数は、ニセモノでは?といわれる疑惑の2点を含め、世界中にわずか37点しかない寡作の画家です。
時は過ぎ、京都大学大学院を卒業後、ニューヨークのロックフェラー大学で“ポスドク(博士研究員)”という肩書きで自分の存在を周囲に認めてもらうため、毎日ボロ雑巾のように働き続けていたある日の帰り道、フリック・ミュージアムという個人美術館で小学生の時に知った運命の画家と再会します。
美術館が所存する3点のフェルメール絵画が放つ“精妙な青の美しさ”に衝撃を受けた福岡ハカセは、その日から“フェルメールオタク”となり、現存するフェルメール絵画・全点踏破の旅へと世界中に足を運ぶようになります。
生命は機械と異なり、パーツが1つ壊れても、自然に組成して変わらず生き続ける動的平衡にあると説く福岡ハカセの発想の原点は、虫とフェルメールの絵画に通じる美しさへの共鳴にあるのではと思います。
結び
♪♪今月のヒークンお薦め・癒しの一枚(^^♪
「ショパン:4つのバラード、幻想曲、舟歌」クリスチャン・ツィメルマン
つい最近まで大の苦手だったショパンのピアノ曲に耳を傾けるきっかけとなったのは、3月10日の『徹子の部屋』に出演した反田恭平さんが弾くマズルカ第33番の美しさでした。その後、何人かのピアニストのショパン演奏を聴いた中で、最も感銘を受けたのが、ショパンの祖国ポーランド出身、18歳で臨んだ1975年の第9回ショパン・コンクール優勝者、ツィメルマンの弾くバラード第1番と第4番の音の奥行きと間の素晴らしさです。多くを語るつもりはありません。ぜひ聴いてみてください。