オルテガの問う、“精神の貴族”とは?
今月はスペインを代表する思想家、ホセ・オルテガ・イ・ガセットのことを取りあげたいと思います。
時代は1929年。ニューヨーク株式市場の大暴落に端を発した未曾有の大恐慌に世界中が騒然とする中、オルテガ渾身の思想書「大衆の反逆」がスペインで出版されます。
この本の中でオルテガは、ファシズムや革命の時代に多数派の意見だけが正しいとされる大衆化社会の危うさを指摘しました。「自由主義は、最高に寛大な制度である。なぜならば、それは多数派が少数派に認める権利だからであり、だからこそ、地球上にこだました最も高貴な叫びである。人間という種族がこれほど美しいことを思いついたとは信じがたいことだ。」(出典引用:「100分de名著・大衆の反逆 第2回リベラルであること」,NHK,2019-02-11,テレビ番組)
オルテガは、少数派の権利を擁護し、自身の敵や反対者と共に国家や社会を統治していける人間のことを貴族と呼びました。オルテガの言う貴族はセレブやエリートなどの階級のことではなく、勇気や責任感を持ち、安易に大衆に迎合しない“精神の貴族”のことを指しています。
「高貴であるということは、彼を著名にした並々ならぬ努力があったことを意味する。貴族にとって、真理の探究は欠かすことができない。真理を手にしようとする意志のあるものだけが、考えの異なる他者と共存できる粘り強さを持った人間である。そのためには、過去の経験値の中から学ばなければならない。」(同上)と、オルテガは考えました。
それこそが自由主義を維持する最も大切な条件だと言います。このオルテガの警鐘が今を生きる私たちに響き渡ってくるように感じます。今月は少し難しい話題だったかもしれませんが、“精神の貴族”に少しでも近づいていけるようになりたいですよね。
結び
♪♪今月のヒークンお薦め・癒しの一枚(^^♪
「ファースト・サークル」パット・メセニー・グループ
1984年、私が高校三年の時に発表されたグループ成長期の代表作です。
このアルバムの3曲目「ザ・ファースト・サークル」を当時FMラジオで初めて聴いた時、白い雲のじゅうたんの間から顔を出す、朝の陽ざしに照らされた青空が目の前いっぱいに拡がりました。